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1月, 2017の投稿を表示しています

「人殺し」の心理学 デーヴ・グロスマン

第二次世界大戦で前線に送り込まれた陸軍兵士のうち実際に発砲したのは15%ないし20%でしかなかったという箇所が広く知られている著作。一方ベトナム戦争において、条件付けと訓練によって90%ないし95%にまでになった事実も明かされていることは衝撃的。その秘密は脱感作にあり。数々のハリウッド製ベトナム戦争映画で観たのはそれだ。 責任の分散と集団免責、倫理的距離、社会的距離、文化的距離、集団との近接、服従を要求する権威者、合理化と受容のプロセスなどの条件が揃った時、残虐行為は増幅する。湾岸、アルカイダ、イラク、IS、いつまで経ってもエンドレス。 これは何も戦争だけに限った話ではない。 リビングでは高校生の息子がPS4でDARK SOULSやらRainbow Sixやらをプレイしている。

「狭小邸宅」新庄耕

課長が言う「自意識が強く、観念的で、理想や言い訳ばかり並べ立てる。それでいて肝心の目の前にある現実をなめる」「わかった気になってそれらしい顔をする」。それを超えてようやくスタート地点に立てる。まともな仕事人になれる。了解です。その上で、こだわるな、逃げろと言っているのだなというのが、最後のパラグラフについてのわたくしめの解釈。お疲れさまです。

沢木耕太郎ノンフィクションVII「1960」所収「危機の宰相」「テロルの決算」

再評価されているケインジアンのひとり、下村治に興味を持って手に取ったが、中身は沢木耕太郎節の群像劇。「危機の宰相」、まさか最後に三島由紀夫につながるとは。当時の日本の政治経済に「世界の静かな中心であれ」と警鐘をならした言葉は観念であるが今の世相にも刺さるものがあるような。「テロルの決算」、浅沼稲次郎と山口二矢それぞれの、親子の描写にすべてが収斂されていくのはやはり沢木節ゆえか。胸を打つというか刺す。

「帳簿の世界史」ジェイコブ・ソール

じゃ、ブロックチェーンで、国も企業もエライ人も、ご家庭も、完璧な透明性を備えた会計責任を実現しようではありませんか。まともな未来への示唆を、古典にあたることで与えてくれる誠実なる良書。 14世紀のルネッサンス期に発明された複式簿記、17世紀フランスの借金王国と18世紀イギリス、アメリカの商業国家のバランスシート、近年の軍産複合体、金融、会計の修復不可な腐敗。最後の審判、清算の日はFin-Techによってアレするのでしょうかね。