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振り向いて三歩、トイレットに歩み寄り、
開けていない包みを落とし込む。
包みはそこに玩具の筏のように浮かんで、
ドラッグはなお、完璧に乾いている。
完璧だ。
手が震えるまま、ステンレスの爪やすりを見つけ、
白いタイルに膝をつく。
眼を開けていられずに包みをおさえ、
やすりの先端を継ぎ目に突き刺して、ねじる。
やすりがタイルの上でかちゃっと音をたてる中、
水洗ボタンを押すと、ふたつに割れて空になった包みが消え去る。
額を冷たいエナメルに圧しあててから、
思い切って立ち上がり、洗面台に行って念入りに手を洗う。
なぜなら、望みが、
自分ではっきり分かる望みが、指を舐めることだったから。
—ウィリアム・ギブスン

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